微睡みに漂う言葉

思ったり、考えたり、気付いたり、そんなことを綴っていきます。

広島を歩く〜②駅から原爆ドームまで

 
改札を出て原爆ドームまでの行き方を調べようと携帯を手にかけるが、思い直してポケットにしまう。
 
旅行、をしに来ているのだ。
しかも、1人だ。
 
決められた予定なんて何もない。
焦る必要なんかまったくないし、いきあたりばったりで全然良い。
街中の地図だけで辿り着こう。そう誓った。
 
駅を出るとすぐ、広島電鉄が見えた。
路面電車!そのことを思い出してワクワクしてしまう。
でも、江ノ島でも鹿児島でも路電は乗ったことあるし、ドイツやポーランドだって当たり前のようにトラムがあった。
逸る気持ちを抑えて、取り敢えずここでは歩いていく。
 
信号で待つ。
1分ほどのんびり立ってると、青に変わる。
歩き出すと同時に、ちょっとずれた位置に歩道橋があるのが見える。
僕は歩みかけた足をわざわざ止めて、歩道橋に向かう。
ちょっと高いところから先を見たかった。
 
歩道橋を登りながら、駅方向を改めて見ると名前も知らない学習塾が多いことに気がつく
その中に三幸学園があった。

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三幸学園。仙台にもあったし大都市への旅のたびに見かける気がする)
 
 
あまり人には言ったことはないけど、三幸学園は、僕が就職活動で面接を受けた企業の1つだ。
全国であらゆるジャンルの専門学校を運営していて、多くの場合、社員はその専門学校のクラスの担任になる。
ここが、面白いところだと思っていて、教職を持ってない人でも学校の先生になれるのだ(授業は勿論受け持たないが)。
 
そして、先生達が自分の所属する専門学校の生徒募集といった広報から在校生のインターン先の斡旋などまで、なんでもやる。
勿論、大変な仕事ではあるけど、授業を受け持ってないからこそできる一人一人の生徒との向かい合い方がここにはあって、教育とビジネスの2つに興味のあった僕にとって非常に魅力的に思えた。
 
実はNPO法人カタリバ時代の友人・後輩がここに就職しているのだが、その人たちは本当に僕が心の底から尊敬している人たちだ。少しだけ紹介したい。
 
W同期は、人から好かれる天才だ。人一倍大変なことを経験したのに震え縮こまっていた自分の殻を破った。マイナスすべてをプラスに力づくで変換する心の強さと実行力がある。
 
I後輩は、人と向き合うということにひたすら真摯で、僕は絶対敵わないと思ってしまう。この人の前にいると褒められたいし認められたくなる、つまり頑張ろうと思ってしまう。そんな気力を人に与える。
 
K後輩は、いつも笑っている。お調子者なのに周りへの気配りを人一倍していて、すっごく周りが見えているんだなと思う。そして人を絶対に貶さない。一緒にいるとどうしても笑顔になってしまう。
 
そんな人たちが就職している三幸学園がすごくないわけがないんだよな、と常々思ってる。
三幸学園の経営理念は「生徒の幸せ、社会の幸せ、学園の幸せ」、だから三幸らしい。(https://www.sanko.ac.jp/about/principle/)
 
幸せをビジネスの場に持ち込むと胡散臭いみたいな見方も世にはあるけど、僕個人としては声高々と幸せを叫ぶ人を積極的に応援していきたい
 
 
てくてく歩いてると、中学校の横を通った。
そこにはポストが置いてあった。
大したことない事務内容から、もしかしたら生徒の恋心まで雑多にこの赤い箱に詰め込まれてるかもしれないなと思うと、可能性の塊だと感じる。
そのまま、シュレディンガーの猫量子論クリストファーノーラン と連想して、あ、ダークナイトを見ないとと思う。
 
ここでポストの写真を撮り忘れて(厳密にいうと取らなくて良いよなと思って200メートルくらい歩いてうわー撮って置けばよかったと後悔した)、これ以降写真は積極的に撮ろうと考える。
 
 
広島合同庁舎を見ると、岐阜県庁によく似ていて、当たり前だけどどこも一緒のように見える。
でもフォルムは好きだからそのままであってほしい。

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(広島合同庁舎。通っていた大学の校舎にも似ていて親近感)
 
そのまま後ろを振り向くと、KUMONが見えた。
自分の人生に影響を与えたN後輩とその化物じみたへこたれなさを思い出して温かい気持ちになる。
N後輩みたいな、幸せをゼロから生み出して躊躇なく隣人に分け与えられる人が世の中にもっと増えれば、世界は明るくなるのに。
子どもができたらKUMONに入れるのも良いかもしれない。

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(KUMONって探すとどこにでもあるなと思う)
 
RCCテレビもあった。TBS系列のこの地方のテレビ局だ。
メディア界隈ではラジオとテレビを両方やってるテレビ局をラテ兼営というがここもそうらしい。
見るからにテレビ局!という外観も良い。
もしかしたらまた来るなんてことがあるかもしれない。じっと目に焼き付けた。

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RCCテレビ。パラボラアンテナがかっこいい)
 
ここまで来て目的地からだいぶ道がそれてることに気づく。ゆったりした心で方向修正をする。
広島城の濠が松本城みたいだなと思ったり、地下通路への入り口で鵠沼海岸を思い浮かべたり、あらゆる風景が自分の歩んできた人生に重なる。

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広島城のお濠。ジョジョ立ちみたいになってしまった。)
 

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(地下通路への入り口。鵠沼の青春が一瞬でフラッシュバックする)
 
 
そろそろ近いはずなのに一向にその姿が見えてこない。
おかしいなと思いつつも合ってると信じて歩く。
挙げ句の果てにこども科学館のプラネタリウムがそれなんじゃないかと思ってしまったりもした。

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(奥にあるのが子ども科学館のプラネタリウム。ドームっぽいよね…?)
 
 
いや、そんなわけないよなと思って少し歩く。
そして横に目を向けた先に、あった。
途端、何故だか緊張に包まれる。
僕はイヤホンを外した。
「遠い呼び声」は聴こえなくなった。

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